2020/11/24

慣れない土地で喫茶店に入って、ぼんやりとウォーターサーバーを眺める。
濾過された水が一滴一滴と波紋を広げてゆく。
波紋は静かに広がり、タンクの内壁に反射して再び中心に集まる。

 

そして気づいた。ここは全く揺れの無い場所なんだと。
都会は常に揺れている。
かすかに、わずかに揺れが継続している。

 

それは、近くを通る車の振動だったり、あるいは地下鉄の走る音だったり。
いつもどこかで、新しいお店ができて古いお店はなくなってゆく。
都市の新陳代謝とでも言おうか。

 

雨の中、濡れた車の窓ガラスから見る景色は、
どこか滲んでいてゆがんでいて、しかし確かに存在を主張していた。

 

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海に行ったのは昨日で、
砂浜に打ち寄せる波を、光を、空気を見ていた。
ただただ、1羽のカモメが、飛び立ち、遠くへ消えてゆく様を、
打ち寄せる波に冬の柔らかい西日が差してゆく様を、
少し遠くで上下するサーファーの影を、
心に焼き付けておきたかった。

 

海岸線沿いに、道路が。
うみねこ海道という看板。
8kmも走れば灯台のある岬にたどり着くらしい。

 

ふと、後ろを見れば、小さな路地の坂道を西日が照らしていて、
小さな夏のかけらを見つけた気持ちになった。

 

 

2020/11/17

 

最近、何だろうなぁと思うことがよくある。
あれは何だったんだろうか。と思うこともある。

 

残像だけが残っているような感覚。
寝ぼけたような、ただはっきりしていたような。

 

生きていく中で不要なものは捨てゆき、
希薄なものしか残らなくなってしまったような。

と、時々思う。

 

今朝はとても眠い朝だった。

2020/11/12

誰かが一節をささやいた
誰かがそれに重ねた

from 大脱走のテーマ(FoZZtone)

 

時に、輝かしいと思う何かを目にした。
そこに本体をなくした鍋の蓋があって、また、鍋の蓋をなくした鍋があって、
偶然出会ってそのままつきあっているという話だった。

 

自分自身はもはや鍋どころか跡形もないが、
そんな様子を見れて、自分にない何かを見た気がした。

 

時間は容赦なく経ってゆく。
この7年間、長かったようであっという間だった。
その間に、自分の中にある何かが時間とともに平たくなって
何もなかったかのように、何も感じなかったかのように振舞うようになって、
いずれそうする事も自分の当たり前の一部になってゆき、
平たい上澄みの幸せの中に溶け込んでゆくのだろう。

 

そんなことを昨晩思った。

今は、ただ、時々カシスオレンジをかき混ぜるマドラーのような人と、
時間を共有することで、過ぎ去った何かや自分の中にあった何かを
時として見つめなおすことしかできない。

そのような時間を幸福に思うことしかできないのだ。

2020/11/11

 

ここに来てから7年ぐらいが過ぎていたことに気が付いた。

カシスオレンジのじわっと混ざりゆく様子を思い浮かべながら気づいた。

 

妻と付き合い始めて3年間ぐらいの間、僕は妻に何かを求めていたが、

結局手に入れることはできなかった。

どんなに口にしても、どれだけの時間を共有しても、

どんなに長い間手をつないでいたとしても、

どれだけの夜を共にしても。

 

ただ、いつの日からか、もうそういうものだ、理解されないものだと思っていた。

理解してもらおうとすることで逆に妻に不甲斐ない思いをさせていたということも

口をつぐむ理由の一つになった。

 

自分の中にある悲しみやさみしさにふたをして、理解されないものだと心の奥底にしまい込んだ。そうする他無かった。

 

社会では生産性が重視され、個々の思いや感情は不要なものとして切り捨てられる。

そんな感傷に浸る時間があるのなら、もっと稼げと画面がささやく。

声にならない声で。

 

 

 

再認識することになったきっかけはとても些細なことだった。

この人は、感性が似ている。と感じる人が現れたからだ。

 

その人と話していると、今まで伝わらなかった言葉にならなかったものが、

きれいに言語化され、共感することができる。

ただそれだけで、心の中に沈殿した昔の記憶や思いがかき回され、

より一層自分がぼやけていく。ぼやけた中に自分自身を見つける。

 

そして、底知れぬ暗闇のなかで、何もない安堵を感じる。

 

 

2020/09/11

今朝は早くに目が覚めた。

朝5時ぐらいだろうか。横で寝ている妻の肘が、布団の横にほったらかしになっていた電灯のリモコンのボタンを押し、部屋中が一気に明るくなった。

目の前が一瞬紫がかったピンクのような色になり、飛び起きた。

妻は、眠たそうに起き上がり、明かりを消してもう一度床についた。

僕は今起きた衝撃が何なのかよくわからず、しばらく起きていた。

 

カーテンに隠れた窓から朝の弱くも白い光が差し込み、暗い部屋を照らしていた。

しばらくすると、眠気が襲ってきたので、再び寝た。そして、久々に夢を見た。

 

夢の中で、僕は最初は体育館のようなところに居た。

長机と椅子が適当に並んでいて、自分と同じように作業をしている人がまばらに座っていた。

何かの拍子に、自分以外の作業員は出ていき、自分だけが取り残された。

僕は、体育館の裏口のような扉を開けて外に出た。

するとそこはカラオケボックスのような場所で、僕の横に友人が座り、僕と話をした。話の内容は覚えていないが、「久しぶり!」ということを話していた気がする。

 

夢はそこで一旦途切れた。

妻が南国風の柄のパジャマから着替え、暗い部屋の中でご飯を食べていた。

僕はご飯を食べる妻を見ながら、さっきまで見ていたのは夢だったんだなと思った。

仕事に行く妻を布団の中から見送り、再び眠った。


気が付くと10年近く会っていない古い女友達と小さなオープンカーの後部座席?に乗っていた。

あまりにも長く会っていなくて、僕は彼女の姿を目に焼きつけようと

そう思ったが、じろじろと見るのも失礼な気がして、ただ、彼女と同じように前を見ていた。

時々言葉を交わし、「すごい久々だね~」とか「何年振りだろうね~」とか話したように思う。

 

その友人とはよく遊んだ。ひたすらカラオケに行ったり、だらだらとしゃべったり。

もう長く会っていないが、今肘が当たる距離にいることが、不思議だった。

時々、前を見ている彼女の半袖姿を見ると、10年という歳月が昨日のようによみがえった。

不思議なひと時だった。

もうあと10分もしたら二度と同じように楽しくしゃべることはない、そんな気がした。

それが不安で、尚のこと前ばかりを見ていた。

 

ここで何か約束しておかないと、二度と会えない気がする。

そう思って、僕は彼女をデートに誘うことにした。

「いつか」とかいうと、「いつ?」と返ってきそうなので、

いろいろ迷って「ねぇ、デートに行かない?」とだけ言ったように思う。

すると、「いいよ~。どこに行こうか?」と返ってきた気がする。

 

そして、夢から覚めた。

起きてからしばらくぼんやりしていた。

仲の良かったその友人と、その雰囲気がまだ残っているような気がして、

しばらく布団から移動したくなかった。

不思議な夢だった。

 

 

よく考えれば、10年近く会ってないし、僕には妻が居て、今度子供もできる。

彼女も、きっと結婚して子供ができて、幸せに暮らしているだろう。

この空の下のどこかで、幸せに暮らしているであろうことを幸せに思う。

 

改めて考えると、彼女は僕よりも少し年下だが少し大人で、僕は少年と呼ばれていた。

当時、彼女と遊びたいと思う人は山ほどいただろうな~とも思う。

その中で、彼女と長く時間を共にできたのは、きっと僕の中の少年の部分が大きく関係しているんだろうなと思う。

また、あえてデートに誘いたかったのは、彼女が楽しむ姿を一緒に楽しみたいからなんだなと思った。

 

自分が外に出て、どこかに行きたいと思う気持ちが、一緒に楽しみたいと思うところにあるんだなと、改めてそう思った。

 

妻が妊娠してから、旅行とか、ちょっとした外出とかがとても減っているので、

最近そのような外出に飢えている。

 

妻がだめなら、友人を連れてどこかに行こうか?とか、一人で2週間ぐらいどこかを旅行しようかとか、そんなことばかり。

 

ただ、書き残しておきたい。

そう思ったので、1年ぶりに日記を書いた。

 

 

2019/09/04

雷雨の時間は過ぎ去って
雨が止んだ頃には、もうとっくに日がくれていた。

街灯に集まる虫
じめじめとした空気

それは、全くいつもと変わらなかった
ついさっき過ぎた時間が、まるで無かったかのように。

今度は北に、旅行に行きたいと思った。

2019/07/17

少し時間が空いてしまった。

陽炎が見えるほど暑い昼時、
干からびかけたヒトデと、
海草が熱気を帯びて乾くような
そんな匂いが漂っていた。

海から遠ざかると山が近づき、
蝉の鳴く声が近くなる。


ヤドカリと拾ってきた二枚貝は、暑くなって
水槽の中で死んでいた。
その後、どうしたかあまり覚えていない。
花壇に埋めた気もする。


昔々のおはなし。